次の日になって私は薬を飲んでから学校に行った。
華鈴ちゃんには病気のことを言わないと決めて代わりにいちばん話すべきだと思ったことを話すことにした。
「瑚々〜!!おはよう!もう大丈夫なの??」
お母さんが体調不良と伝えてくれたおかげで余計な心配はかけずに華鈴ちゃんが安心しきった顔で近づいてきてくれた。
「うん。もう大丈夫だよ。あ、華鈴ちゃん。話したいことがあるの。ちょっと一緒に来てくれない?」
「うん。わかった。」
華鈴ちゃんは呼んだ時の声色で察してくれたような気がしたけど、ごめん。まだ言えないんだ。という罪悪感に心を囚われた。
「あの......恋バナなんだけど......」
「瑚々が!!?誰!どこの!だれ!」目の前の華鈴ちゃんは少しワクワクしているように見えて私も話す口が止まらなくなった。
「あのね、夏月先生なんだけど......」
「やっぱりかぁぁぁぁー」
え?
「華鈴ちゃん。やっぱりって??」
「んー?ずっと分かってたよ。瑚々めちゃくちゃ顔に出てたもん。」
バレてたんだ......。
「それで?告白するの?」
目をキラキラさせて明らかに楽しんでるように見える華鈴ちゃんがすごく可愛く見えた。でも......
「告白!?相手、先生だけど!?」
「先生だから!するんじゃん!え、まさかしないの。あと少ししか一緒に過ごせる時間ないよ?」
「わ、わかってるけど......」
「恋に自覚したならあとはアタックしなきゃ!応援するよ!」
いつになく華鈴ちゃんは私のことを応援してくれて少し前向きな気持ちになった。

「みんな、おはよー!HR始めるから席に戻ってぇー!」
私たちが教室に戻ってすぐ、夏月先生がきた。
『あ、松森さん、きてる!おはよう。もう大丈夫なの?』
「はい。大丈夫です。」
『よかったぁぁぁー』
あぁー!今日もカッコよすぎ!!
ひとり悶える私をおいて夏月先生は教卓の前に行き出席簿をてにした。
『じゃあ、出席とりまーす。』
そう言って一人一人名前を呼んでいく姿すらも私にはすごくかっこよく見えた。
『松森さん』
「は、はいっ!」
『wwwどうしたの??』
「あ、い、いえ。なんでもないです笑」
わぁぁぁぁー!今まで私どうやって名前呼ばれるのに耐えてたんだっけ!?
名前呼ばれるのさえドキドキしてしまう私は、恋したら盲目なタイプなのかもしれない。
『じゃあ、最後に今日の予定です。えっと、今日は避難訓練があります。災害用アラームが校内に鳴り響くようなので、鳴っても慌てず落ち着いて行動してください。では、HRを終わります。』
先生の一言で学級委員が挨拶をしみんないっせいに1時間目の授業準備にうつっていったが、私は1人沈んだ気持ちだった。

「華鈴ちゃーん(泣)」
「どうしたの、瑚々。」
「私、あの、災害用アラーム怖いから嫌いなんだけど......いつなるか分からないんだよね(泣)」
「あー。あれ、急に鳴る割には音大きくてビビるよね。大丈夫だよ。私と一緒に行動しよ。」
「うぅー。ありがとう華鈴ちゃん。」
それから私たちはいつ来るか分からない避難指示放送に気を取られることなく授業を受けていった。
そして、いまは3時間目が終わったところ。
次は理科で制服からジャージに着替えなければならず華鈴ちゃんと一緒に更衣室に来た。
「あ、華鈴ちゃん、私お手洗い行ってくるから先に教室に行ってて。」
「わかった。時間ないからなるべく早くね。」
華鈴ちゃんにそういいお手洗いに向かい着いたそのとき。
「「ジリリリリリリリリーーーーー!!」」
避難指示を意味する音が校内に鳴り響いた。
「え、え、なんで......いま。」
こ、怖い......やだ。動けない。
全身に鳥肌が立ち足が震え始めた。
そ、そうだ......ひ、避難......。私は必死に進もうとしたけど震える足は思うように動いてはくれない。

そしてとうとう私は廊下の真ん中でしゃがみこみ目の前がだんだん真っ暗になっていきそのまま意識を手放した。