「松森さーーん!」
病院について、少し待った後、看護師さんから呼ばれてお母さんと一緒に少し大きめの診察室に入った。
ファイルがたくさん詰まった棚があったり、嗅ぎなれないくらいの消毒の香りがした。
慣れない光景にあちこちみていると、後ろから声をかけられた。
声をかけてきたのは白衣を着た30代くらいの若い男性。
『松森 瑚々ちゃんだね?』と聞かれたので、わたしはすぐ「はい」と答えた。
『私はこれから瑚々ちゃんを担当する星城(せいじょう)です。好きに呼んでいいからね。』
そう言って微笑んだ顔がどことなく夏月先生に似ていて、少しドキッとした。

『さっそくだけど、瑚々ちゃんの病気について説明するけど大丈夫??』
「はい。」
とても砕けた感じで話しかけてくれる星城先生はお医者さんという私の中のイメージとはかけ離れていたけれど、目の前でカタカタとパソコンを使っている横顔は間違いなくお医者さんだった。
『瑚々ちゃんの病気は、後天性感覚神経失感症(こうてんせいかんかくしんけいしっかんしょう)という病気で、先天性で患う人はいるんだけど瑚々ちゃんくらい大きくなってから患う人は5000万人に1人くらいですごく珍しい病気なんだ。主に症状は視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の感覚神経が少しの間働かなくなってそのせいで感じなくなるというのが症状。』
お母さん達から聞いていたことを改めて説明されているだけだから理解はできた。
『で、ここからが多分初耳だと思うんだけど、今言った症状が抑制できる薬があるんだけど瑚々ちゃんくらい大きくなってしまうと量が多くなって副作用がでてきてしまう可能性があるんだ。もちろん、そのことを踏まえて副作用を抑える薬も飲まないといけなくなる。』
「ようするに、薬をたくさん飲まないと行けなくなるということですか?」
今まで後ろにいたお母さんが初めて口を開いた。
『はい。そういうことになります。ですが、定期的に診察に通っていただければ少しの変化も見落とさず徐々に薬を減らしていけると思います。』
私の後ろで真剣に話を聞くお母さんを見て病気ということを改めて自分のなかで感じた気がした。
説明をし終わってパソコンを打ちにくるっと向きを変えた星城先生は『これから一緒に頑張ろうね』と私に微笑んでくれた。
やっぱりその顔は正面から見ても夏月先生に似ていた。そのあと薬をもらって私は家に帰った。