起立。さようなら。」学級委員の子がそう言ってみんなが一斉に教室を出始める。
私は華鈴ちゃんと一緒に話しながら帰っていたのに、家に着いたあともメッセージのやりとりで時間が早く過ぎていった。

月曜日からの学校が楽しみすぎると、あっという間に土曜日は過ぎていく。
今日は夏月先生と過ごす一日目の朝。
今の担任の先生が嫌なわけではないけど、私は夏月先生に会うのが楽しみだった。
「おはよう!」
華鈴ちゃんは私より早く来ていて、なんだか語尾に♪がついたような口調で私に言った。
「おはよう華鈴ちゃん。」
「あのね!瑚々!今日、数学の高薙(たかなぎ)先生お休みらしいよ!!」
「そうなんだ。早く良くなるといいね......」
「うん。そうだね。って違う!!今日数学あるんだよ!?」「うん。?」
高薙先生、怖いから苦手なんだよね......なんというか、クセが強い。
「だーかーらー!今日の数学は、夏月先生だって言ってるの!」
へ?
「ほ、ほんとだ。」
確かに金曜日に数学の教師免許持ってるって......
「やっと気づいたか。この天然少女」
天然ではないと思うけど、いつもなら憂鬱に感じる数学が少し楽しみになっているのはなんでなんだろう......?
夏月先生の話をしていると、『なになに?俺の話?』と言いながら後ろから夏月先生が声をかけてきた。
「わっ。おはようございます先生。」
『うん。おはよう。』
一日の始まりがそんな爽やかな感じの夏月先生に一瞬、胸がキュンっとした。

ん?キュン??なんで??

不思議な気持ちを抱えながらいると、チャイムがなり、HRが始まった。
『おはよう。先週も挨拶したけど、今日から先生に変わってきました。東條 夏月です。よろしくね。じゃあ、出席代わりに自己紹介してもらってもいいかな??』
じ、自己紹介......!?!?
初めましてのときでさえ、原稿を考えて前日までお母さんと練習してたのに。
じゃあ、右の端から行こうか。そう言い進む自己紹介と迫る自分の順番。
そして、私の番になった。
「えっと、松森 瑚々です。部活は吹奏楽部に入っています。」
『松森さんね。えっとじゃあ、質問。部活ではなんの楽器をしているの??』
「あ、えっとトランペットです。」
ああ、これね。と言いながら両手を前に出してトランペットのポーズ。
そんなポーズしてる先生が可愛くて仕方ないwww
『おっけー!ありがとう。』
よかった。答えやすい質問で。
1人心で安心した。
そのまま、順調に自己紹介と質問は進んでいき私はあることに気づいた。
"先生が質問する内容に被りがほとんどないこと"
たくさん、考えてきたのかな。そう考えると少し嬉しくなって今まで知らなかったクラスメイトのことに耳を傾けていた。

『うん。みんなありがとう。それで、今日、数学の先生がお休みということで急遽、俺が担当することになってるんだけど、今どこを勉強しているのか......じゃあ、宮槻。教えてくれるか?』
あ、はい。と返事をして昨日までのノートをパラパラめくる香澄くん。
『えっと、三角形の合同条件のところです。』
『あー!はいはい。じゃ、先生、勉強するので、これでHR終わりにします!』
先生が勉強ってwとクラスみんなが思ったであろう雰囲気は学級委員の声でいつも通りに戻った。
でも、私はなんだかいつも通りじゃなくて......。
HRの後半辺りから頭痛がして、華鈴ちゃんに保健室に行くと伝え教室をでてきた。
保健室は少し遠いから、少しふらつく身体をなんとか動かして歩ける状態だった。

ドンッ

「ご、ごめんなさい!!」
『いや、俺もごめんっ!!!って、松森さん。』
「え?あ、夏月先生。」
『大丈夫?怪我してない??』
「はい。」
『ならよかった。でも、もうすぐ授業始まるのに、どこにいくの?』
「そう言う先生こそ、どちらへ?」
『え、あ、自分の荷物がなぜか保健室にあるらしくて取りに行くところなんだけど、なんか、着かなくてw』
ん......?
迷ったってこと??学校で??
「あの、私も保健室に行くので良ければ......」
『ほんと!!?着いていっても良い!!?』
先生の後ろに白い子犬のしっぽが見える.......。
「はい。」
『え、でも。どうして行くの?......あ、やっぱりさっきので怪我させちゃった!!?』
急にシュンとするのほんとに犬みたいw
「私、身体が弱いっぽくて......よく来るんです。」
『そうなんだ。』
......?あれ。今日って確か保健室の先生......。
『あれ、?出張って書いてある。松森さん!先生いないけど!?』
「あ、はい。知ってます。言われてたので。」
今日はたまたまいないけど、もしもの薬の場所は把握してるから大丈夫。
そうなんだ。という少し心配そうな先生の声を耳にしながら保健室の奥にあるベットに横になりに行く。
久しぶりに保健室に来た感覚で、自分の病状が良かったことにすごく嬉しさを感じたまま、ベットに横になり2、3分で眠りの世界に入っていった。