Bittersweet chocolate

「……先生、遅くなりました」

しばらく泣き続けて、少し腫れた目元を冷やしてから、私は図書室に戻った。

「あら、おかえりなさい、麗奈ちゃん」

図書室のカウンターには、小林先生が一人で座っていた。

「……気分は、大丈夫?」

委員会の仕事中に不自然に長く外に行っていたにもかかわらず、遅かった理由については何も触れない。

逆に、優しく、いたわるような声音で先生が問いかけた。

「……はい。もう、大丈夫です」

この先生には何でもお見通しなのかもしれない。そう思いながら、言葉を返す。

「なら、良かった」

ゆったりとした微笑みに、何もかもが洗い流されたような気がした。

そんな気持ちになりながら、カウンターの裏側に回り、小林先生の隣に座る。

少し気分が落ち着いてくると、見えていなかった周りの状況を確認する余裕も生まれた。

「先生、……高坂は?」

「ついさっき忘れ物を取りに教室に戻ったわ。何でも、とっても大切なものらしくて。その前に、誰かに呼ばれてたのと関係あるのかしら」

「……そうなんですか」

高坂がいないことに、安堵してしまっている自分がいる。

今、彼を見たら再び精神が不安定になりそうで、怖い。