Bittersweet chocolate

「知りたく、なかったっ……」

口から漏れるのは、あの時言葉にならなかった思いで。

一度形を得てしまえば、次から次へと席を切ったように溢れ出す。

「好きな人がいないから、接点が無くても、頑張れた」

「誰も特別扱いしないから、心が救われた」

「ちょっとずつでも、距離が埋めれたらって、そう、思えたのに」

ボロボロとこぼれ落ちていく。

今まで溜め込んでいた、弱音。そして涙も。

「好きな人がいるのなら……もう、可能性ないじゃん……っ」

半ば悲鳴のようなその声は、誰にも聞かれることなく風に攫われて消えていった。

ボロボロになった心に、立っている気力など残っておらず、床にペタリと座り込む。

……もし、今自分の顔を見ることが出来たら、きっと物凄く酷い顔なんだろう。

泣き笑いのような、ひきつった笑みを浮かべて、私はそう思った。