「ん~、それでそれで? 今回はどうしたの?」

興味津々とばかりに、身を乗り出して聞く杏里。

その言葉に、先程落ち込んでいた元凶の存在を思い出す。

「……言葉で説明するより、見た方が早いよ」

そう言って視線をずらし、対象の方を見ると杏里が「あー!」と大きな声を出した。

「分かった、高坂(こうさか)だ。高坂関連だ!」

今度は周りに配慮してか、息を潜めて小さな声で喋る彼女。

分かりやすくため息をついてみせると、「……ドンマイ」と苦笑された。

「……仕方がないって分かっているけど」

問題の机の方へ再び視線をやる。

毎年のように見てきた光景。

……彼のせいだ。

整った鼻梁に、長いまつ毛に彩られたシャープな目。

首筋に僅かにかかる黒髪は、女子も真っ青なくらいに艶があり、彼の色気の一因となっている。

隠れファンクラブがあるとも噂される彼の名は――高坂。

年がら年中告白やラブレターなどの話題に事欠かない、学内屈指のイケメンである。