体にグッと力を入れ、震えを悟られないようにゆっくりと歩く。

「あら、麗奈ちゃん終わった? お疲れ様」

「……(さかき)

高坂の顔を見ないよう、小林先生の顔だけ見て話す。

「はい、終わりました。……ところで先生、ちょっとお手洗いに行ってきてもいいですか?」

「全然いいわよ。いってらっしゃい」

「ありがとうございます」

そのまま、扉を開けて外に出る。

廊下のひんやりとした空気が、私の熱を少しだけ奪っていった。

……お手洗いなんて、ただの口実。

だって、今はもう一秒だって、私があの場所にいられなかったから。

図書室からある程度距離が開くと、すかさず近場の階段を駆け上がり、屋上へ行った。

びゅう、と冷たい風が吹く。

日が陰ってきた冷たい屋上には、案の定誰もいなくて、今の私には丁度良かった。