本棚に阻まれてこちらが死角になっているのか、二人が私に気づいた様子はない。

「へぇ、高坂くんってモテるのね」

「まぁ、チョコはそこそこ貰えますけど……」

そこそこ……? と頭の中で疑問符を飛ばしながら近づいていると、ふと妙案を思いついた。

(そうだ、委員会の仕事終わったタイミングでチョコ渡せばいいのかも)

無駄にならずに済みそうだ。良かった、と足取りも軽く二人の方へ行く。

だが、そんな浮ついた気持ちでいられたのも、その時までだった。

「……でも、本当に欲しいやつからは貰えなかったんで」

少しボリュームを落とした高坂の声が聞こえた瞬間、私は縫い留められたかのようにその場から動けなくなる。

「……! あら、高坂くん、本命がいたのね」

「……えぇ、そうです、けど」

歯切れが悪い高坂に、にこにこと笑っている小林先生。

ちょっと困ったような笑いを浮かべて、高坂は言う。

「なんか、先生を前にすると、ぽろっと思ったことを口にしちゃって調子狂うな」