何故かエヴァンは顔を真っ青にし、フリージアは冷や汗をかいている。

二人がそうなるのも、無理はない。シオンが、鬼の形相で二人を睨んでいるのだから。

「……」

シオンはにこりとエヴァンとフリージアに笑いかけた後、息を吸い込んだ。

「刃物を持ってる相手に真正面から突っ込むなんて、二人とも馬鹿じゃないの!?」

エヴァンとフリージアは、シオンからそう言われ、その場で正座をする。アジトに乗り込む前、シオンからは「武器を持っている可能性があるから、真正面から攻撃はするな」と言われていた。

しかし、エヴァンとフリージアはそれを無視して突っ込み、相手が隠し持っていたナイフで二人は怪我を負ったのだ。

「……だって……」

エヴァンは拳を握り締めると、何かを呟いた。その呟きがフリージアの耳に届き、フリージアはふっと笑う。

(……誰かが傷つくのが見たくなかった、か……)

フリージアがそっとエヴァンに目を移すと、エヴァンは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。その顔が何だか可愛く思えてきて、フリージアは笑う。

「フリージアさん!何で僕を見て笑うわけ!?」

フリージアが笑ったことに驚きつつ、エヴァンはそう返した。