その瞬間、乾いた音が部屋に響いた。フリージアが、伸ばしたフィオナの手を叩いたのだ。

フィオナは、伸ばした手を引っ込めると赤くなった自分の手を見つめる。

(……フリージアさんに叩かれた……?)

フィオナは、顔を上げるとフリージアを見た。普段、無表情のフリージアは一瞬だけ何かに怯えるような顔を見せると、両手を頭に乗せる。

フリージアの頭には、警察官だった頃の記憶が流れる。フリージアには、憧れだった先輩がいた。しかし、その先輩は逮捕から逃れた、シオンが名前を告げた犯罪組織のメンバーに殺されてしまったのだ。

「……何で、何で……!?」

フリージアは訳が分からなくなり、叫んだ。

「……フリージアさん、落ち着いて……」

精神科医であるレイモンド・アルストロメリアは、フリージアを落ち着かせようとフリージアに近づく。

その時、フリージアが床に倒れ込んだ。

「フリージア!!」

シオンは、倒れたフリージアに近づくとフリージアの体を揺さぶる。しかし、フリージアは反応しない。

「……」

レイモンドは、無意識のうちに発動した特殊能力でフリージアが一番傷付いた瞬間を見てしまい、悲しそうにフリージアを見つめることしか出来なかった。