「それじゃあ、1番から自己紹介してくれ」
ボサボサ頭に眼鏡。漫画で見るような使えない先生という感じの人が私のクラスの担任らしい。
私は今日、高校の門をくぐった。
島の総人口に当たるんじゃないかと思うくらい人が溢れていた。
入学式の今日は、新入生の親御さんも来ているため余計多いのだろう。
私の家は引越しの片付けが忙しくて欠席だ。きっと、私の両親にとって私の高校入学なんぞ大したイベントではないのだ。
教室の大半は同中の人がいるらしく仲が良さそうに話している。
冴えない教師の言うことなんて聞きそうにもない。
学力がそれなりに売りの高校もこの程度かと少しガッカリした。
今日は入学式だけで帰れると思っていたため暇つぶしの本も持っていない。
暇だな。
そう思いながら机に突っ伏した。
しばらくしてクラスが静かだったので体を起こした。
クラスに人はいなかった。
いや、いることにはいる。
私を覗き込んでいる人が1人だけいる。
「内田さん。日直だよ!私、梅田茉莉(まつり)一緒の日直!早く終わらせて帰ろっか!」
そう言ってキラキラとした目でこちらを見つめる梅田さん。
日直日誌を書いて教室の戸締りをして職員室に日誌とカギを届けるのが日直の仕事らしい。
勝手に一人でやってくれても良かったのに。そう思いながら教室の窓を閉めて回った。
「内田さん。出席番号1番なのに堂々と寝ちゃっててみんなびっくりしてたよ〜!昨日、島からこっちに来たんだって?お疲れ様!」
出席番号が1番だったことを今初めて知った。
先生には少し申し訳ないことをしたな。と心のどこかで思った。
どこで知ったのか分からないような情報を口にした梅田さんは私に日誌を渡してきた。
「はい!これ、先生に渡してきて!」
めんどくさいものを任されたものだ。
しかし、先生の目の前で寝てしまった謝罪もしておいた方がいいと思ったため素直にそれを受け取り職員室へ向かった。