はて。これはどういう意図なのだろうか。
少しの思案。しかし、方程式など存在しない分からないものに対しては熟慮したところで答など出やしない。
「……ねぇ、」
こっち、向いて。
そんな意味も込めてそれを吐き出せば、肩の横にあった彼の手がゆっくりと降りていく。
するり、彼のお腹に巻き付いている私の手を撫でたあと、ゆるりとそれを解いた彼はこちらへと向き直り、視線も向けた。
「……ごめん、」
「……」
「マスターから、花梛がストーカーにあってたことや拐われたこと聞いて、調べ、た」
ゆらり、彼の瞳が僅かに揺れる。
「何か、あってからじゃ遅いだろ……だから、その、探偵業をしている人に頼んだんだ……無期限契約で、あの男を見張っていて欲しい、って。些細なことでも何でもいいから報告してもらってた」
「……うん」
「それで、知ったんだ。あいつが、こそこそとバレないように花梛のことつけ回してることと、三日に一度あの場所に行ってることを」
「……うん」
「マスターから、連絡が、きたんだ。花梛と連絡が取れないから家に様子を見に行ったらもぬけの殻だったって……鍵、開けっ放しで、携帯も置きっぱなしで、」
「っ……う、ん、」
「……責任は全部俺が負うからって、無理言って……ちょっと、家の名前も使って、警察に動いてもらった」
じわりと視界が滲んで、ぼたりと床にそれが落ちた。