ぴこ、ぴこん。
再び鳴り響いた音によって、思考が戻る。
── シカトは泣くよ、俺
それに続いて、瞳をうるうるさせたヒヨコのスタンプが届いた。
シカトするつもりはなかったのだけれど、結果的にそうなってしまったのことは謝ろう。寝起きで頭が働いていなかったことと、私は大丈夫だという旨を返信した。
「…………夫婦揃って、お人好しだなぁ、」
メッセージの送り主、一和理さんは、スタンプを一切使用しない人だ。おそらく隣に、彼の妻がいるのだろう。
彼女、優美さんは、臓器を売ろうとしていたあの夜に、私のまとまりのない話を真剣に聞いてくれて「じゃあ次は、できることを一緒に考えようか」と言ってくれた、素敵な女性だ。「三人寄れば文殊の知恵って言うでしょ」と微笑んでくれた。
婚約者から夫婦へと変わった彼らは、私のことを妹のように思ってくれていて、私も一和理さんと優美さんのことを兄や姉のように慕っている。
否、慕って、いた。
己の中にある感情に気付いたのは、ごく最近。一和理さんと優美さんの関係性に法律が関わるようになってからだった。
とはいえ、ただ私が無自覚だっただけで、おそらく彼らは気付いていたと思う。百歩譲って一和理さんは気付いていないとしても、優美さんは確実に気付いているはず。なのにこうして、私を気にかけてくれているのは、手を差し伸べた以上は最後まで、という気持ちが彼らの中にあるからだろう。
「…………本当は、離れなきゃ、なのにな、」
私は、そこにつけ込んでいる。


