「……ぅ、」

 嗄れた音が鼓膜を抜けた。

「い……っ、」

 と、同時に、こめかみを這う鈍痛。鏡を見なくとも眉間に深いシワが刻まれているだろうことは分かった。
 こめかみに手をあて、ゆっくりとまぶたをあげれば、視界を占めたのは剥き出しのコンクリート。感覚的にどうやら私の身体は横たえられているらしい。左側が下だ。
 とりあえず、起き上がろう。
 (もや)がかかったように霞んでいる思考のまま、腕に力を込めて上半身を持ち上げた。
 
「っ」

 瞬間、ガシャンッ、と派手な音が響いて、首が引っ張られた。
 え。何。
 それを思うのと同時に、首をぐるりと一周しているひやりとした感触に気付いた。そこから芋づる式に感じた、嫌な重み。慌てて首元へと手を這わせれば、アパートの玄関についているものよりも太さも強度もありそうなチェーン。それががっちりと溶接されているであろうものは、ひやりとした感触と同じように私の首に巻き付いていた。

「…………え……?」

 首、輪……?
 指先からの情報により、形成されていく現状。
 宅配の人。「大きくて重い」荷物。こめかみの鈍痛。剥き出しのコンクリート。私をどこかと繋ぐ首輪のような何か。

「……や、やだ、」

 ひゅ、と喉が鳴った。