私のその行動の意味をどう受け取ったのか。
 私に、ではなく、対峙しているその人と幾つか言葉を交わし、それを終えてから一和理さんは私の頭にぽすりと手を置いた。

「お前ね、絡まれすぎ」
「……ごめんなさい」
「まぁ今回は知り合いっぽいし、何か、わけアリっぽいから俺はあんまり口出ししねぇ方がいいのかもしんねぇけどさ」
「……」
「……拐われて、監禁されかけたの、忘れんなよ」
「……はい。助けてくれて、ありがとうございました」
「ん」

 帰るぞ。
 その一言を合図に手を引かれ、数分前に歩いてきたばかりの道を、一和理さんとふたりで並んで歩く。

「……なぁ、花梛」
「……はい」
(うち)に来いよ」
「……」
「優美も心配してる」

 忘れもしない、一年と八ヶ月前。
 私は、勤務先のバーの常連客の男に拐われた。

「いくら保護観察中だっつっても、やる奴はやるからな。さっきの、あいつのこともあるし……なぁ、やっぱり一緒に暮らそう」
「……」
「そりゃ、俺とお前は、書類上は他人だけど、俺はお前のこと妹だって思ってる。優美だってそうだ。せめてお前に、」
「大丈夫です」
「花梛、」
「気持ちだけ、もらいます。ありがとうございます」

 あと一歩、あと数秒、遅ければ、地下シェルターのようなところに閉じ込められる寸前だった私を、一和理さんは助けてくれた。