「あの、何を考えているのか大体想像はつきますが…心配は要りません。父は彩響さんを見ても何も言いませんので」
彩響の考えを読んだのか、寛一さんがフォローした。
「いや、まさか、何も言わないはずないでしょう」
「大丈夫です。元々無口な人なので」
「あなたのように?」
「……」
今回慌てたのは寛一さんの方だった。彼はしばらく悩んで答えた。
「俺、無口ですか?」
「私はそう思いますよ」
「…」
「ほらね」
「…今回は反応に困っただけです」
寛一さんが視線をそらす。その反応がなんだか可愛くて、そして新鮮で、彩響は思わず笑ってしまった。照れながらも、向こうも満更でもないようだった。
静かで平和な街。長く続く線路沿いを二人はしばらく歩いた。やはり都心に比べどこかゆったりとした雰囲気を感じる。彩響が周りの風景に夢中になる頃、寛一さんが花屋の前で止まった。「お待ちください」と一言残して中に入ると、すぐ戻ってきた。胸には柔らかい感じがする紫色の花束を抱いていた。
「父が喜ぶかと」
「お父さん、お花が好きなんですか?」
「そうです」
(口数の少ない、お花が好きな中年男性…)
きっと寛一さんのお父さんは優しくて、寛一さんのように繊細な人なのだろう。なんとなく思い浮かぶイメージで自然と彩響の口元に微笑みが滲んだ。
(おそらく顔も…イケメンなんだろうな。もし息子がお父さん似だったら)
「そのお花、とても似合いますね」
彩響の言葉に寛一さんが目を丸くした。
「俺ですか?俺は男です」



