すてきな天使のいる夜に~3rd story~

ーside 冨山ー



沙奈が俺に、今の気持ちを吐き出してくれた事が嬉しかった。



いつも沙奈は、辛い気持ちや不安を外に吐き出すことが出来ず、自分の中へ溜め込んでしまう。



少しづつ、誰かを頼り話すことができるようになったのは沙奈の成長なんだと思う。



沙奈の中で、誰かを信じて頼ることができるようになって俺も安心できる。



目を離してしまうと、いつも無理をしているから。




溜まりに溜まった感情の矛先が、いつも自分へ向かっていた沙奈。




自分の感情が爆発するまで、我慢してしまう子だから。




そんな沙奈が、心配で仕方なかった。



沙奈が退院してからは、今のようにはいかないけど遠くからでも沙奈の成長を見守っていきたい。




「沙奈…?」



規則正しい呼吸の音が聞こえ、沙奈に目をやると沙奈はオーバーテーブルに顔を突っ伏し眠っていた。




「本当。いつも、事切れたかのように眠るよな。」




ペースメーカーの植え込み術を行って疲れたよな。



全身麻酔では無いとはいえ、こんなに小さい体に負荷をかけてしまったんだ。



それなのに、勉強を頑張ると言った沙奈。




沙奈の意思を少しでも尊重したかった。




切羽詰まったような表情で、俺に不安を話してくれたから。



だけど。



無理をさせてしまったと思ったけど、穏やかに眠る沙奈の姿に安心する。



あどけない寝顔に、まだ子供の部分が残っているとほっとする。



普段が、大人顔負けするほどに考えや言葉がしっかりしているからな。



子供でいる期間が、沙奈にとって短かったからな。



今は少しでも、子供でいてほしいと思う。



子供として、俺に甘えてほしいと思う。




「普段が、大人っぽすぎるんだよ。」




「そうだよな。」



「大翔先生。」




沙奈の髪を撫でていると、後ろから声が聞こえ振り返ると、まだ白衣を身にまとった大翔先生が声を掛けていた。



「冨山さん。ありがとう、沙奈のそばにいてくれて。


それに、勉強まで見てくれて。」




「いえ。沙奈の担当看護師として当たり前です。


それでは、俺はここで失礼します。」




「あっ、待って。冨山さん。」



「はい。」



「もし、冨山さんが良かったら沙奈の勉強を見てやってくれないかな。


きっと、入院期間が長かったから進路のことや授業について行けるか不安に感じていると思うんだ。


学校へ戻った時、少しでも沙奈が授業に着いて行けるように、冨山さんの時間が大丈夫であれば沙奈のことお願いしたい。


なるべく、俺が沙奈の勉強を見たいと思うんだけど、難しい時もあるから。」



大翔先生は、沙奈のことをよく見ている。



七瀬先生兄弟のように、沙奈のことをよく分かっている。



沙奈を一目見ただけで、沙奈の感じていることに気づいたのだろうか。




沙奈の口から話さなくても、心が通じあっているんだな。




そんな2人の関係が、少しだけ羨ましい。




「冨山さん?」



「分かりました。俺で良ければ。沙奈の力になれるなら喜んで引き受けます。」



「ありがとう、冨山さん。」



「沙奈、お疲れ!って、寝てるのか。」



「翔太。今、眠った所みたいだ。」



「きっと疲れたんですね。


ペースメーカーを入れる前からずっと、毎日が不安で仕方なかったと思いますから。


その緊張からやっと解放されたんですね。」



「そうだな。あれ、紫苑は?」



「あっ、今外来で患者さんのカルテをまとめてからこっちに向かうそうです。」



「そうか。」



「冨山さん、沙奈のそばにいてくれてありがとう。」



「いえ。では、俺はこれで失礼します。」



俺は、2人に頭を下げ沙奈の病室を後にした。




ペースメーカーの植え込み術の経過も順調だし、今は喘息の発作も落ち着いていてコントロールが良好な状態。



きっと、近い内に大翔先生からの退院の許可が降りるかもしれない。



そろそろ、沙奈も退院支援をしていかなければいけないよな。



その前に、沙奈の連絡先を知りたい。



2年前に再会をして、入院期間は沙奈を見てきたけど連絡先を知らない。



沙奈のプライベートに、俺が踏み込んでもいいのか迷っていたから。


だけど、今日改めて俺を頼ってくれた。



俺に気持ちをぶつけてくれた。



もう、十分沙奈との信頼関係を築くことが出来ているだろうか。



身内として、沙奈の相談相手になりたい気持ちは日に日に強くなる。



沙奈の成長が楽しみで、どんな大人になるのか、どんな道を歩んで行くのか。



これからも、沙奈の傍で見守っていきたい。