すてきな天使のいる夜に~3rd story~

ーside 紫苑ー



昨日の夜とは違う表情で眠る沙奈。



大翔の膝の上だからということもあるだろうけど、沙奈の眠る表情は穏やかだった。



「大翔。ありがとう。



もう少ししたら、沙奈をベッドに戻していいから。」




「分かった。だけど、今は少しでも長くこうして抱きしめていたいんだ。」




大翔は、顔に髪がかからないように整えながらそう話した。



それにしても。



沙奈は、これからの治療を受け入れられるだろうか。



きっと、喘息の発作をコントロールしながら心臓の治療に専念しないといけない。



ペースメーカーの適応でもあると、沙奈の心電図の波形から推測することが出来る。




大きな手術にはならないけど、小さい沙奈の体にまた負担がかかってくる。



それに、沙奈は耐えることができるだろうか。



また、受け入れ難い現実やその後の治療に沙奈の心が折れてしまわないか心配だった。



2年前からずっと、沙奈が病気と向き合っていけるように、沙奈のそばで支えてきたつもりだった。




だけど、沙奈はまだ話すことができない部分もあってそれは十分分かっていたはずだった。




だからこそ、沙奈の表情の変化を見逃さないように注意深く自分なりに沙奈を見てきた。




それでも、仕事で家に帰れない日もあれば沙奈とすれ違いの生活になってしまう日もある。




なるべく、家には俺か翔太がいるようにしてきたけど医者である以上、必ずそうできるとは限らない。




家に帰れない日は、沙奈のことが頭からはなれなくて必ず電話かメールを入れるようにしていた。




だけど、声や文面を見ただけで沙奈の気持ちを読み取ることなんてできなかった。



もう少し、沙奈の心の声に耳を傾けるべきだった。




沙奈が、ここまで自分を追い込む前に。




1つ俺や翔太との壁を乗り越えたと思ったら、再び沙奈の前に大きく冷たい壁が現れる。



何でも話せる関係になってきたと思う程、沙奈にそういう一面が見られると自分の不甲斐なさを感じる。



信頼関係を築き上げることが、難しいのは分かっているけど。



それでも、沙奈にはいつも心のままに生きていてほしいし、俺達のことをもう少し頼って甘えてほしいとも思う。




限界まで、追い込んでしまう沙奈だから心配になる。




「紫苑。あまり、思い詰めるなよ。」




「えっ?」




「沙奈のこと、心配なのは分かるけど紫苑がそんな険しい顔をしていたら沙奈が心配になる。


人一倍、人の心や気持ちに敏感な沙奈だから。



紫苑が、そんな表情していたらきっと沙奈は自分を責めてしまうと思うんだ。



治療の効果は、必ずしもいい方向へ向かうとは限らないけど、今はできるだけ沙奈が安心して笑顔で1日1日を送ることができるように俺達が沙奈を支えていこう。」




「紫苑。紫苑も、1人で抱え込まないでほしい。俺も、沙奈の兄としてできることをしたい。


それに、紫苑の助けにもなりたいと思ってる。


だから、何かあったら俺にも話して。」




「翔太…。」




そうだ。



今は、落ち込んでいる場合じゃないよな。



「ありがとう、大翔。翔太。


沙奈の心が落ち着くまで交代で沙奈のそばにいよう。


夜の間、不安になる気持ちが大きくなると思うから交代で泊まろう。」




沙奈が、少しでも前を向いて治療を受けられるように。



この小さな沙奈の手に、手を添えて自分の額に引き寄せた。