「沙奈…。」
「本当は…怖いの。
明日が、来ないんじゃないかって…。
眠っている間に、心臓が止まっちゃうんじゃないのかなって…
たまらなく、怖いの。
暗い夜が…。怖いよ…。」
言葉を詰まらせながら、沙奈は心にある不安な気持ちを言葉にして俺と翔太に伝えてくれた。
俺は、沙奈を持ち上げ自分と向かい合う形で膝の上に乗せていた。
抱きしめたこの温もりが安心する。
そばにいてくれることが、安心する。
ゆっくりとした心臓の鼓動ごと、抱きしめたくなる。
俺にとって、沙奈の全てがたまらなく愛おしいと感じる。
俺の腕の中で泣く沙奈の背中を、何度もさすった。
大丈夫と言い聞かせるように。
少しでも、息詰まった呼吸が落ち着くように。
「沙奈…。今はたくさん泣いていいから。
翔太や紫苑にも、言われてると思うけどその辛い気持ちや不安な気持ちを、ちゃんと表に出してほしい。
色んな不安を抱えて、見えない病気と闘っているんだ。
病気が悪化して、怖くない人なんていない。
沙奈は、喘息のことや心臓のことで何度も死への恐怖を感じていたから、その分余計に不安や恐怖があるんだろう。」
避けきれない病気。
止めることができない、病気の進行。
それに加えて、沙奈は辛い過去も背負っている。
抱えきれないほど、沙奈には大きな苦しみがあるからこそ沙奈の心の支えになりたいと強く願う。
誰よりも幸せになってほしいと思う。
「だから沙奈。不安になったら隠さずちゃんと俺に言ってほしい。
遠慮なんてしなくていいんだよ。」
「だけど…」
「俺や翔太達も、言いたいことを言えない関係なんて望んだ覚えはない。」
沙奈の抱える不安は、いつだって大きくてその不安に押し潰されそうになる所を何度も見てきた。
沙奈の気持ちと、真剣に向き合っていきたいと皆が思い感じているから。
だからこそ、もう無理はしないでほしい。
言いたいことを我慢して言えない関係なんて望んでいない。
そんな薄っぺらな関係なら俺はいらない。
「沙奈のためなら、何だってする覚悟はもうとっくにできているんだから。
出会った時から、ずっと沙奈を守る覚悟はできているんだ。」
この、愛おしい温もりのためなら俺は何だってしたい。
「大翔…先生。」
「病気の治療は辛いと思うけど、俺も紫苑も沙奈と一緒に病気と闘っていくから。」
翔太は、沙奈の頭を優しく撫でる。
乗り越えないといけない壁は、たくさんあると思うけど。
沙奈はいつも、自分の心のままで俺達のそばにいてほしい。
今は、沙奈が言いたいことを話せるように沙奈自身も自分の気持ちに正直になってほしいと思う。
そのために、俺は何度も沙奈の小さな心の声に耳を傾けていくから。


