すてきな天使のいる夜に~3rd story~

ーside 大翔ー



冨山さんに、車椅子を押してもらいながら沙奈は病室へ戻った。



予測できたはずの出来事だったのに、ここまで病気が進行していたことに気づくことが出来なかった。




俺の知識不足か、観察力不足か。



常に沙奈の病状には、注意深く診ていたはずなのにな。



今、そんなことを考えても仕方ない。



「大翔、ありがとう。」




沙奈の診察が終わってから、俺と紫苑は医局へ向かっていた。




沙奈が病気になってから、何度も紫苑のこの悲しい表情を見てきた。




「病気の進行を、明らかに出来て早めに治療を始められることが1番だと思う。


だけど、その診断に沙奈が受け止められるかも大切だからな…。


沙奈が気持ちや症状を隠さず俺たちに話せるようにしていかないといけない。



それがきっと、何よりも難しいとは思うけど…



治療をするに当たっても、沙奈の気持ちを最優先にしていきたい。」




沙奈が治療を嫌がることは、今までに1度もなかった。



沙奈はあまり気持ちや感情を表に出すような子じゃないから、誰よりも感情を読み取ることが難しい。




ここ最近は、笑顔も増えてきている。




それは、本当に嬉しいことでもあるけど…。




診断を聞いた時の沙奈の表情はあの時と同じだった。



初めて、彼女に病気を告げた時も何もかも否定するような、嘘であってほしいという気持ちが全面的に出ていたからな。



最後まで、病気についての話を聞くことの出来なかった彼女が、今日は最後まで話を聞いてくれた。



そこは大きな成長だと思う。



慢性疾患を抱える人は、自分がどうやって病気と向き合っていくのか考えることが大切だから。



上手くコントロールをしながら、付き合っていかなければいけない。



だからこそ、まだ17歳の少女には大きな診断だったと思う。




「そうだな…。今まで以上に、沙奈の気持ちと向き合おう。


沙奈が折れてしまわないように、暗い表情が少しでも明るくなるように支えていくよ。


大翔、沙奈のこと任せたよ。」




「ああ。大切な人の命と笑顔は俺が守る。



紫苑も、辛いことがあったら俺に話してほしい。


翔太にも、そう伝えてくれ。」




紫苑が、俺に沙奈を託してくれることは素直に嬉しいと思う。



主治医としても、1人の人としても沙奈に相応しい存在として認められているみたいで、心の底から喜びが込み上げてくる。




乗り越えるべき壁は、まだまだたくさんあるけど沙奈が向き合っていけるように支えよう。




外来の診察が終わったら、真っ先に沙奈の元へいこう。



今は、翔太が沙奈のそばにいてくれるから安心できるけど。



1秒でも早く、彼女の顔が見たい。



1秒でも長く、彼女のそばにいたい。



「大翔、明日の外来サポートなんだけど。」



「明日は1人でも大丈夫。俺の代わりに、沙奈の傍にいてあげて。」



明日は、翔太も外来の日で休むことが難しい。




紫苑は、俺の外来サポートに回ってくれる日だけど明日の予約は少ないから1人でも回せそうだった。



今はなるべく、沙奈を1人にしておきたくないしな。



離棟が出来る程体力はないと思うし、沙奈のことを理解している冨山さん出勤しているから大丈夫だと思うけど。



それでも、沙奈が変な気を起こさないかっていう心配も心の中にあった。