「紫苑、ありがとう。」
「えっ?」
翔太がしばらく、沙奈のそばに着いていると言ってくれて、俺は大翔と一緒に廊下へ出た。
とりあえず、俺と翔太は交換で沙奈のそばにいようと話した。
今は、1人にしておきたくなかった。
なるべく沙奈には、無理はしないようにと話しているけど、誰かの目が届いていないと、無理をしていそうで怖かった。
症状を隠していたこともそうだけど、さっきのように沙奈の感情のコントロールが悪い方向に働いてしまうことがある。
可愛い笑顔の裏腹にはいつだって暗い影がある。
その暗い影に押しつぶされてきた沙奈の姿をたくさん見てきた。
だからこそ、沙奈の抱える暗い影にいち早く気づいて闇に飲みこまれていかないようにしていきたい。
「いや。沙奈のこと。やっぱりさすがだな。
沙奈の考えていること、思っていることに気づいて沙奈が話せるように持っていくのが上手いなって思って。」
「それが出来るようになったのも、大翔が沙奈の心を開かせてくれたお陰なんだ。
今のように、沙奈は感情の表出が出来なくて気持ちを読み取ることが難しかったんだ。
だけど、沙奈と過ごしていく中で少しずつ読み取れるようにはなったんだけど。
それでもまだ、沙奈は1人で悩んでいる時が多くあるんだ。
体調が悪いことを隠していたのもそうだよな。
沙奈はいつも目に見えない恐怖や不安と戦っているんだ。
沙奈にかかる負担がいつも大きすぎる。
大翔は知ってると思うけど、沙奈は不安な気持ちや辛い出来事を誰にも話せず1人で抱え込んでしまうから。
だから俺、沙奈には無理をしてほしくない。
沙奈を守るって決めたから。」
沙奈を引き取った日から、沙奈を育てていくこと。
消えてなくなりそうな小さい命の灯火を、一生灯し続けることができるように守るのは俺達の役目でもある。
沙奈が再び、悲しみの闇へ落ちていかないように。
この繋いだ手を離さない。


