今日は長瀬くんの友達もさすがに傘を持ってきたらしい。私たちは昇降口を出た後、お互い傘を差して、並んで歩いている。
……傘の分、教室から昇降口まで一緒に歩いてきた時より、二人の距離が少し遠い。それを寂しく感じてしまう私は、もう結構重症なのかも知れない。
「じゃあさ。いつも雨を眺めながら、何を思ってるの……?」
なに、を……?
私は傘を少し傾けて、長瀬くんの顔を下から見上げた。
長瀬くんも私の顔を優しく見下ろしている。
「……えっ、と、特にたいしたことは、なにも……。ただ、」
「うん、ただ?」
「音を、聞いていて……」
「……音?」
「うん。雨の強さによって、音が違うから、面白くて……」
私の言葉に、長瀬くんは少し驚いたような表情で私の顔を見つめた。そして、すぐに頬を緩める。
「音、かぁ、なるほどね……」
「え、ごめん、私、変なこと言ったかも……」
「ううん、全然、変じゃない」
変なことを口走った恥ずかしさで思わず赤面してしまう。だけど「変じゃないよ」と、もう一度呟いた彼の表情は、とても優しく微笑んでいて、私は今度は違う意味で顔が熱くなった。



