雨の音は、


――翌日。

全てが普段通りなのに、私はどうしたって普段通りにはなれない。――長瀬くんを見てしまうと。

チラッと姿が見えるだけで心臓はドキドキするし、遠いところで話してるのに私の耳は彼の声を拾ってしまうし、つい彼の姿を目で追ってしまう……。


あぁ、ダメだ。



今日も空はどんよりと曇っていて、そうすると、やっぱり昨日のことを思い出してしまう。

そう、彼の声、仕草、手の温度、触れる指先――。


ほんと、ダメだ。今日は早く帰ろう。


――そう決めたはずなのに、また放課後直前に降り出した雨をぼーっと眺めてしまっていた。いつの間にか教室には、昨日と同じように誰もいなくなっている。


雨の音が心地良いから悪いんだ、と、雨のせいにして。帰り支度をして、もう一度窓の外を見やる。


暗い灰色の空から雨粒がどんどん落ちてきて、そのたくさんの雨粒のオーケストラが、サーッと波のような音を奏でている。雨粒の大きさや量によって、毎回違う音に聞こえるのが楽しくて仕方がない。


少しの間その音に聞き入った後、私は鞄を持って、窓際の席を立った。