【第2月曜日】
「なんでこんなに卵買ったんだよー(笑)」
「知り合いがくれたの。養鶏場から貰ったんですって」
「にしても凄い数だな。当分卵料理か?」
「そうね、適当に料理して冷凍保存しとくから適当にチンして食べて」
「わかった。粉もん作ってくれたらありがたい」
「了解」
「麻衣子は大学時代から俺の胃袋掴みっぱなしだよな」
 懐かしいことを思い出した。貞臣と麻衣子は大学のサークルで知り合った。大食漢だらけのサークル内で麻衣子の存在は宝だった。料理が上手く、いつ部屋に行っても旨い物を食わせてくれた。麻衣子が結婚した時は、あの手料理を食える男が羨ましいと思ったが、すぐに離婚したのでほっとしたっけ。俺の付き合った女たちはまともに料理を作れたためしがない、皆外見を飾るばかりだった、男の幸せは胃袋を満たされることで得られる、と貞臣は思っている。
 女子力アピールあからさまにいそいそと料理する素振りに騙される男が多いのは気の毒な話だ。

「麻衣子ぉ~、俺たち結婚しないか」
「また始まった。バツイチの女なんかとなんで結婚したがるのよ。ろくなこと無いから(笑)」
「だって麻衣子の作る飯を毎日食いたいからさー」
「あたしゃ飯炊き女か」
 それだけではない。会話が楽しい、セックスも上手い、仕事の上でも麻衣子の提案に助けられている。
 何度も麻衣子と一緒に家庭を築きたいと思ってプロポーズした。麻衣子が離婚してすぐにプロポーズしたが断られた。こんなに結婚したいと思った女はいない。
 麻衣子は、
「男なんて一緒に暮らし出したら釣った魚に餌やらないからねー」
 と言い、全く請け合わない。きっと他の男にもこんな風にしているんだろうな。
 今回はいつまで居るんだろう。1週間以上居たことはないけれど。
「明日までに卵を全部使い切る料理を作るわね。冷凍保存したら一旦帰る。2、3日したらまた来るわ」
 珍しいな、短期間に2回来訪。
「わかった、待ってる」
 100個近い卵を盛大に使って、麻衣子は冷蔵庫の冷凍室と冷蔵室を満杯にして帰って行った。家にあるだけの器とシール容器とラップフィルムを駆使して詰め込んで行った。端から順にチンして食べるか。シール容器は弁当として持ってけるな。愛妻弁当かっ(笑)