【第5月曜日】
 貞臣は麻衣子の海外赴任を喜ばなかった。
 1年間はあっと言う間だし、今はインターネットもあるし距離感は無い、と麻衣子が言っても落ち込みようが尋常でなかった。麻衣子が結婚した時と同じくらいショックだと貞臣は言った。
「結婚してたのも1年くらいだったし、同じだと思えば良いじゃん」
 麻衣子はしきりに貞臣をなだめた。
 暫くして漸く気を取り直した貞臣は、
「向こうで履く靴は俺に任せろ。全部送ってやるから」
 と言った。
「ありがとう。必ず帰って来るから待ってて。あ、知子のことも宜しくね」
「わかった。送別会楽しみだな」
「うん」
 自分の気持ちに折り合いを付けて麻衣子の帰りを待つことにした貞臣は、麻衣子が居るケアンズに行けば良いんだと気付いた途端気持ちが軽くなった。買い付けを理由にでもするか…と。だが、何故ケアンズ? 観光地としてもシドニーやゴールドコーストと違ってかなりニッチなところなのに何を新規に開拓?と貞臣は不思議に思った。
 それは兎も角として、麻衣子が出発するまで1ヶ月とちょっと。今回が多分最後だな。麻衣子を味わい尽くしておこう。1週間は居て欲しいが。
「会社に寄ってくれたら足のサイズ計って出発前に何足かみつくろっておけるよ。いつ来られる?」
「明日行ける。知子の店に行く前に寄ろうかしら」
「わかった。店舗に話して上の事務所に上がってもらえるようにするから。店頭に並ぶ前の靴を見せて上げられると思うんだ。現物はまだ無いからデータになっちゃうけど。そしたらその後一緒に新橋行こう。」
「ケアンズは雨季だけど大丈夫?」
「流石に長靴は履かないだろ」
「確かに(笑)」
「全てのTPOを網羅するだけ持ってけ」
「うわぉ」