【第4月曜日】
「麻衣子が1年間来ないとなると、冷蔵庫の中の食料の処理に困るなぁ」
「何よそれ。私は残り物処理係か」
 勿論それだけではないし、力がそれだけの意味で言っているのだと麻衣子は思っていない。
「ケアンズに行く企画立てようかな」
 と言う力を麻衣子は睨んだ。
「ダメ、同業他社のカメラマンと交流してることがバレるとスパイ疑惑がかかる」
「マーケティングだろ? 俺の部署とは全く違うよ。専属のカメラマンとして雇ってくれないかな。安くするぞ」
「カメラマンは私なの。今はスマホで充分良い画像が撮れるのよー」
「それ、営業妨害だから」
 素人が写す画像は構図や色彩に問題があるのがほとんどだが、スマホがそれをカバーするようになって久しい。力のような天才的なカメラマンでない限り、職を失う者が増えている時代だ。力だとて自分の腕を今以上に磨かなくては危ういかもしれないと危惧している。
「知子の企画はどうなったの?」
「通った。女性実業家の特集と女性が店主の高級志向バーの特集と、あとは知子さんのお店のカレンダーを作ることが決まった。酒屋のスポンサーがついたんだ」
「今年のカレンダーはもう遅いでしょう?」
「うん、だから来年1年撮りためて再来年用になるかな」
「あら、そしたら私の帰国とカレンダー発行記念のパーティーを合同で出来るわね」
「おぉ、それは良い案だ。それも取材しよう」
「来年1年間はあんまり食材を貰って来ないようにしてね」
「そうだ、知子さんの店に提供するって手もあるな」
「それ、良い案だわ。知子が喜ぶわね。大量の卵は困るだろうけど(笑)」
 出発までにボーイフレンド達にしばしのお別れを告げる訪問をしとくか、と麻衣子は思っていた。