《そうだ、麻衣ちゃん、今度の日曜日はハロウィンだから店で仮装パーティーをするの。麻衣ちゃんも来て。勿論仮装してだよ》
 知子から誘いのLINEが来た。通常日曜日は定休日だが、イベントがある時は営業するそうだ。ハロウィンと聞いて真っ先に顔が浮かんだのは寛明だった。その週は寛明の大学で学祭がある。寛明は大学院生だが学部生と一緒に模擬店をやると言っていたっけ。日曜日の夜は空いてるかな。準備で忙しいだろうか。
《わかった。1人連れて行きたい子が居るから都合を訊いてみるね》
《「子」?》
《うん。若いから「子」なの(笑)》
《年齢層広いわねー(笑)》
《若い子は良いわよー(笑)》
《だったら私その子戴きたい!》
《どーぞどーぞ(笑)》

【第5日曜日】
 たまたま、ほんとたまたま、寛明の大学の学祭のテーマがハロウィンで、寛明は仮装してチョコバナナを売るそうだ。しかもその仮装がトイレットペーパーをグルグルに巻いたミイラ男。だからその格好そのままで新橋に行くよ、と寛明は言った。どうせその夜は他にも仮装した連中が町中を闊歩しているだろうから何の違和感も無いだろう、と。さて、そうなると麻衣子はどうしようか。と考えた末、麻衣子もトイレットペーパーを使用することにした。が、ミイラ男になるわけにはいかない。そうだ、クレオパトラにしよう。トイレットペーパーを糊でくっつけてドレスとベールを作り、服の上から着れば良い。上から着るだけだから簡単だ。
 現地集合にして待ち合わせを18時にした。麻衣子はその前に店に到着しトイレットペーパーで作ったドレスを着て、寛明を待っていた。寛明は文字通り頭からつま先まで体中にトイレットペーパーを巻き付け、しかもところどころチョコバナナのチョコレートが付いたままやって来た。血が付いているように見え、それはそれで不気味であった。そのままだと顔がわからないが、トイレットペーパーだからそのうち破れたり溶けたりするだろう。
 知子は中学の時のセーラー服を着て髪をおさげにしていた。中学の時とサイズが全く変っておらず、おさげはまんま中学の時の知子を思い出させた。化粧を落とせば中学生に見えるかもしれない。無理か。美人は老けて見えるから。

「知子さんて美人ですね」
 寛明は店に着いて早々開口一番にそう言った。この野郎、自分が女にもてるとわかっているのでグイグイ先に行く。知子も言われ慣れているので物怖じしない。にこにこしている。今日はセーラー服だけど、普段の店の装いだともっと美人なんだから、と麻衣子は言った。