【第3水曜日】
 正人は麻衣子が火曜日の夜誰とどこに行ったのか気になっていた。笹塚の次の火曜日はいつも大井町の自分の部屋に来るはずが、1日ずれて水曜日になったからだ。今までもそんなことはあったが、今回は麻衣子の様子が違って見えた。他に男が居るのは百も承知で付き合っている。いつ別れを宣告されるかしれない。そうなったら潔く麻衣子の前から消えることができるか自信は無い。そんな矢先のこの1日のずれ。麻衣子は理由を話すだろうか。
 だが杞憂に終わった。なぁんだそんなことかと正人は胸をなでおろした。そして来週の火曜日、また新橋へ行こうと誘われた。麻衣子の同級生の店があるから、と。美人の同級生を紹介したいそうだ。珍しいこともあるもんだ。麻衣子は自分達の関係を他に知られるようなことを今までしたことがない。いずれ種明かしがあるだろう。麻衣子と居て楽しくなかったことはないのだから、これからも信じよう。