【第2月曜日】
 新橋に中学の同級生の店があるから飲みに行かないかと誘うと、貞臣は二つ返事で快諾した。ただ、今日はダメだ、と。部屋に行ったら予定をすり合わせよう。

「卵料理は全部消化したみたいね」
「うん、おかげさまで。弁当に持ってけて助かったよ」
 冷蔵庫には相変わらず適当に主菜や副菜になりそうな食材が揃っていた。が、卵は無かった。流石に飽きたのだろう。
 2人してキッチンに並んで立って野菜を刻んだり、炒め物をしたりした。
「ほら、やっぱり俺たち良い夫婦になると思わないか?」
「また始まった。私は結婚に向かないってば」
「他にも男作るから?」
「そゆこと」
 自分が付き合う女が他に男を作っても不快に思わない男はなかなか居ない。麻衣子はそんな稀有な男を取り揃えている。性格や生き方、育った環境を吟味して厳選している。これ以上増やすつもりは無く、男が結婚をするとなったら別れることにしている。他に女が居るだけなら構わないが、家庭を持つと決めた男の生活に影を落としてはいけないと麻衣子は思っている。それに、女は鋭い。旦那がどんなに隠しても他に女が居ることはわかってしまうだろう。

「ところで中学の同級生って女?」
「うん、女。美人よー」
「それは嬉しいね。付き合おうかな」
「どうぞお好きに」
 麻衣子は貞臣が他の女の話をしても全く嫉妬しない。他の女達はテレビに出ている女性タレントを可愛いと言っただけでふくれっ面をする。面倒臭い。
「明日なら行ける。今週の水曜日は休みだから深酒もOK」
「終電逃したら新橋から中野まで歩いて帰る?」
「良いねー。大学時代を思い出す。でもまぁ、タクシーで帰るけどな」
 大学の催しの1つに山手線徒歩一周というのがあった。麻衣子は一度しか参加したことはないが、体育会に所属する男子はほぼ強制と言って良いほど狩りだされるため、貞臣は拓郎と一緒に在学中4回参加した。そして4回とも日比谷公園の噴水に落とされた。それが恒例だったが、今そんなことをやったら大学に抗議が行く。その催しは続いているのだろうか。