「はい……じゃあ次は、紀田くんと若松さんのシーンだね。二人とも頼んだよ!」



今までレコーディングルームの
外にいた千夏ちゃんが中に入ってくる。



その時、何故か目が合って
すれ違いざまに



「優亜ちゃんの彼氏…凄くかっこいいね」



と不敵な笑みを浮かべ
通り過ぎてったーーーーー。



…………今の何?
千夏ちゃんなんか様子が
おかしかった……。



「紀田さん今日は、よろしくお願いしますね♪」



通り過ぎたあと私の横にいた紀田に
猫なで声で話す千夏ちゃん。



「こちらこそ、よろしくお願いします。」



紀田もニコリと微笑むと
私には絶対しないような
紳士的な振る舞いをする。



モヤッ



なんなの……千夏ちゃん
どういうつもり?



紀田もなんでそんな
カッコつけてんのよ。



「ゆあ、どうかした?」



「へ?……あ、うん!大丈夫。菜々ありがとう。」



いけない仕事中に
私情を挟むとこだった……。



今は集中しないと。



千夏ちゃんに対する
心のモヤを薙ぎ払って
その日の収録は無事終了した。




この出会いがまさか
私と紀田の運命を
狂わせていくなんて



この時は思いもしなかったーーーーー。