「はい、じゃあ収録始めまーす。内倉さん、青葉さん、紀田さんスタンバイしてくださーい。」




スタッフさんに言われた通り
スタジオ内のマイク前に立つ



本当に紀田は大丈夫なのだろうか?
見た感じ緊張とかはしてなさそうだけど。




そんな心配事をしつつも
収録が始まるとそっちに
意識が集中してーーーーーー




【ヒロト!!私…】



【今更なに?俺のこと何とも思ってないくせに。そういうのマジでウザい】



【ちょっと!ヒロト!そこまで言うことないじゃん!チハルは謝ろうと…】




【だからそういうのがウザいって言ってんの。俺のこと嫌いなんだろほっとけよ。もう俺…他に好きなやついるから】




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台本の中のキャラクターに
なりきって思いを乗せる



今回は思わぬハプニングで
すれ違ってしまった恋人
同士の物語かぁ…



そして恋のライバルがいて
その子が大抵いろいろ仕組んでて
悪役なんだよね、恋愛アニメあるあるだわ。



でも、やっぱりこうやって
キャラクターに声を吹き込んで
まるで生きているかのような
本当に存在しているかのような
気持ちになれるのが凄く楽しい。




そしてそんな私の声を聞いて
このキャラクターを好きになってくれる
たくさんのファンがいてくれることが
何より嬉しい…だからこそ辛い学生時代を
終えて今ここに立っているというのに…




なんなんだ!?この男は!?
ド素人のくせにめちゃくちゃ上手い!
むしろ素人だとは思えない!!



マジで紀田って何者なの!?
イケメンで社長で何でも卒なくこなして
まあ、口悪いしちょっとヘタレなとこも
あったりするけど基本的かっこいいから
いろんな意味で羨ましい!!



でも、その反面



たまに…心配になる。
本当に隣にいるのが
私で大丈夫なのかなって。



まぁ、今更なんだけどね。