<グスタフ皇国・平原・交流会7日目・14時>

「それでは出発してください」

地図と磁石を片手にアンバーが
先に歩く。

少し遅れてクラリスがついてきた。

アンバーは時間を気にして速足で
歩くが、
クラリスは
散歩でもしているかのように
ぶらぶら歩く。
ところどころ立ち止まって、
花の匂いを確認したりしている。

森を抜け、もうすぐ山道に入る所でアンバーは振り返った。

「君はここで帰れ!
その恰好では山は無理だ!」
クラリスは
ちょっと考えるようだったが

「棄権するの?
グスタフ皇国の1位は
取れなくなるけど」

そうなのだ。
二人で行かねばルール違反になる。

「わかった!君の好きにしろっ」
魔女の国は、すでに最下位は確定だ。
でも、自分は・・・
アンバーは怒りを込めて答えた。

そろそろどこかに指示書が
あるはずだ。
アンバーは周囲を見渡した。
木の枝とか、何か目印になるもの。

「あったぁ!」
クラリスが声をあげた。

「どこに!!」
「この花よ。見て?こうするの」

クラリスは
茂みの中に咲いている花を
一輪摘み取り、口にくわえた。

「蜜が甘いの・・
疲れがとれるでしょ」
「まったく・・」

アンバーは落胆して、近くの石に座り込んだ。

<能天気な問題児>には、つきあいきれない。

クラリスは花をくわえて、
大きな石の上に座り、足をぶらぶらさせている。

木漏れ日がゆらゆら揺れて、
クラリスは妖精のように見える。

きっと、あの絵姿の人のように・・美しくなるのだろう。

魔女の国は
老婆しかいないと聞いたが・・
謎だ・・

アンバーは、ふと、
クラリスの姿に見入っている
自分に気が付いた。