<グスタフ皇国の王宮・謁見の間・10時30分>

恋に落ちたのは・・
その瞬間だった。

イーディスは
クラリスと同じくらい赤くなった。
いや、
自分の髪と同じくらいか。

「ああ、大丈夫です。
こいつは、自分で勝手に触っただけですから。
・・・それに部屋に帰れば
薬草もあるし・・」

ミエルは心配そうに、クラリスの顔を見た。

「でも、冷やさないと・・
氷をお持ちしましょうね?」

「ああ、りがとうございます・・
あなたのお名前は・・」
イーディスの声が裏返った。

「ミエルです。
アンバー様についております」
ミエルは軽やかに立ち去った。

イーディスは、
ずっとその後ろ姿を見続けていた。

「勝手に触ったって・・
言わないで!!

「うちの(うるし)とここの(うるし)の違いを
観察していただけなんだから!」

クラリスは不満げに
イーディスの上着を引っ張った。

「一応(あるじ)なんだから・・
<こいつ>って言わないでくれる?!」

イーディスは、
まったくクラリスを無視して、
ため息をついた。
「ミエルって・・・・いうのか」