ピンクのふんわりとした丈の短いスカートのワンピースを着て、頭にリボンをつけているその子はまるでアイドルみたいだ。俺はドキドキしながら「桜ちゃん」と声をかける。

桜ちゃんは、俺が大好きな歌い手グループであるWMCのリーダーだ。桜ちゃんの本名は、宮谷琴葉(みやたにことは)ちゃん。俺の好きな人。

「……ルーンさん、私、自信が急になくなってしまって……。失敗したらまた炎上しちゃう……。月斗さんにこれ以上、迷惑をかけるわけには……」

緊張や不安からか小刻みに琴葉ちゃんは体を震わせる。自分で決断して何度もリハーサルをしたとはいえ、何万人の前で歌うのは緊張するよね。

「琴葉ちゃん」

俺は琴葉ちゃんの肩に手を置き、目線を合わせる。黒い瞳にはまだ不安が見える。でも、琴葉ちゃんの頬が少し赤く染まっていて、少し自惚れてしまいそうになった。

「琴葉ちゃんは、今日のために頑張ってきた。それは俺たちが知ってる。琴葉ちゃんの失敗を笑った人のことは許さないつもり」