衣装担当のスタッフさんが用意してくれたジャケットに袖を通し、メイクさんにメイクを施してもらう。あっという間にライブの歌い手ルーンの完成だ。

俺の名前は音坂月斗(おとさかつきと)。これから、何万人ものファンの前で歌う。今、この胸にはたくさんの感情が入り混じっていた。

成功させたいという思い、不安や緊張、リスナーさんたちに会える喜び、そしてーーー好きな人と一緒に歌うというときめき。

「桜!あんた、顔色真っ青だよ〜!」

「深呼吸!深呼吸して」

かっこいいジャケットを男子顔負けで着こなす歌い手Siriusちゃんことマーガレット・ワトソンが小柄な女の子の背中をさする。その女の子の手を、歌い手ここあちゃんこと王 春燕(ワン チェンイェン)が握り安心させるように微笑んでいる。

「まあ、ライブに出るなんて初めてなんだ。緊張するのは当然だろ」

Siriusちゃんと色違いのかっこいいジャケットを羽織った歌い手ウルフちゃんことカタリーナ・キャピュレットが腕を組み、女の子を見つめる。その女の子を見ていると、俺の胸がまた高鳴るんだ。