「今、どこにいる?」
できるだけ語気を弱めて、穏やかに聞いたつもりだ。
しかし、

「あの・・・もう少し待ってもらえない?」
「はあ?」
言われている意味が分からず、低い声が出た。

「とにかく私は無事だから、もう少し時間をちょいだい」
「お前、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「うん」
「みんなすごく心配しているんだぞ」
「それは、ごめん」
「もしかして、自分の意志で行方をくらましたのか?」
もしそうなら、俺は立ち直れないかもしれない。

「違うよ、連れ去られたの。いきなり薬をかがされて」
「おい、待て、それって・・・」
完全に誘拐、犯罪じゃないか。

「今すぐそこの場所を言えっ。いや、いい。こっちで調べる。誘拐と分かった以上どんな手を使っても突き止めてやる」
「待って遥、落ち着いて」
「萌夏っ」
これが落ち着いてなんていられるか。

珍しく俺は大声で叫んでいた。