そういえば、小学卒業から中学入学までの時期の空の荒れようはすごかった。
学校でトラブルがあれば必ず空の名前が挙がっていたし、毎日のようにおばさんが学校に呼ばれていた。
俺自身も平石家の養子で血がつながらない家に育つ生きにくさは感じていたが、空はもっと複雑だった。
おじさんもおばさんも結婚の形はとらず同棲しながら3人で暮らすことを選んだ。
一度結婚に失敗しているおばさんからすれば分からない選択でもないし、平石の血筋のせいで週刊誌に乗ることもあるおじさんのことを思えば間違った選択ではなかったと思う。
しかし、そのせいで空は『おじさん』と呼び続け、一度も『父さん』と呼ぶことはなかった。

「なんで俺に聞くんです?」

この春HIRAISIに移動になった空とは会えていないし、俺も専務就任で友人に会う余裕なんてない。

「それはあれだ、就職のときあれだけ頑として『役職に就く気はない、一般社員と同じ待遇にならないならよそに就職する』と言ったあいつが経営の勉強をしたいなんて言い出したのはお前と萌夏ちゃんのことがあったからだろ?」
「そう・・・ですかね」

確かに社長との関係を隠していた空がいきなりHIRAISIに行ってもういい言い出して正直驚いた。
その直前に平石建設と俺に対するスキャンダルがあった。関係があると思うのが普通だろう。

「誰に似たんだか知らないが思い詰めたら過激な奴だからな、心配なんだよ」
「そう、ですね」

さすがに長い付き合い、よくわかっている。