水面に落ちる夕空が好きだった。




 赤とオレンジの鮮やかな光が、さらさらと流れていく。きらめきは川下に向けて消えていき、東の空には深い藍が待ち受けている。

 この着慣れた制服ではもう多少の汚れなんて気にならなくて、コンクリートの階段に腰を下ろす。

 ここを降りれば、川だ。

 あと少しで触れられるけど、その勇気は出ない。

 コンクリートの上から、西の山に落ちていく陽の光をただ浴びていた。




 私の選択はこれであっていたのかな。もう、何も分からないよ。




 滲む視界に、頬を撫でる生ぬるさ。

 これで幸せになれるのかな。

 これが正解なのかな。




 人生は選択の連続というけれど、分岐点で立ち止まるよりもそこから歩き始めた時の不安の方が大きくて、胸がきゅっと縮こまったように感じて。

 かと言って、戻らない日々に永遠を誓うなら、それはきっと私の弱さが幻想を見せているだけ。




 藍が迫ってきた。

 そろそろ帰らないと。

 渋々と重い腰を上げ、スカートを手ではらう。手のひらが砂で少しザラっとしている。

 取手の根元が脆くなってきたかばんを肩にかけると、星のマスコットがぴょこんと跳ねた。一応、マスコットの砂もはらっておく。




 明日は卒業式。

 私の物語が1つ、完結する。