黙ったまま何も言えずにいると、ミクルはふっと息を吐いて、何かを押し付けてきた。
「……これ。後で本当ってわかった時のために」
ずいっと渡された紙には彼女の連絡先が書いてあって、俺は一瞬ポカンとしてしまう。
「え……ナンパしたの俺じゃなくて、お前じゃん」
ついそう突っ込んでしまうと、穂希はあははっと楽しそうに笑った。
「ほんとだ~。さっきのも自分の事言ってたとか?」
くすりと笑う穂希をスルーして、ミクルは踵を返して歩き出す。
そして数歩歩いたところでこちらを振り返り、キツイ猫目をスッと細めた。
「何かあったら、連絡すること。約束ね。……まぁ、そんなこと、ないに越したことはないけど」
「は……」
意味深な言葉を残し、それだけ言って満足したのかミクルは闇夜に消えて行って。
残された俺らはそろって顔を見合わせた。


