そう問いかけると、穂希はしばらくの間ぱちぱちと目を瞬かせ、それからすっとまつげを伏せた。
「んー……。別に、喧嘩とかしたわけじゃないんだけどね。……ちょっと最近気まずくて」
「気まずい?」
穂希の言葉に首を傾げると、穂希は苦笑いしてうんと頷く。
「でも本当に高田先輩が悪いとかじゃなくて、私が勝手に……自信がないだけなんだけどね?」
「自信がないって……なんで」
「……私なんかが、高田先輩と一緒にいることで、高田先輩の価値を落としてしまうんじゃないかって、……そう思っちゃって」
そう呟く穂希の声は頼りなく震えていて、その瞳には長いまつげで暗い影が落ちていた。
俺はその言葉を聞いて、何を言うか考える前に、口を開いた。
「穂希……あのさ」「あれ? 穂希ちゃんじゃない?」
不意に俺の声にほかの声がかぶさって、穂希がビクッと肩を震わせた。


