奥歯をギリッと噛み締める。
「あの……どうかしたんですか?」
気遣うように手を伸ばされて、反射的に振り払ってしまう。
「え……」
「あっ……」
「都生? どうかしたの?」
穂希の不思議そうな声に、我に返って、俺は笑みを浮かべた。
「すみません、知り合いに似ていたもので、驚いてしまって。あの……お聞きしたいのですが、正門ってどこですか?」
「あ、あぁ。正門ですか。こっちです、案内するのでついてきてください」
「……ありがとう、ございます」
歩き出した高田の背中を無言で見つめる。
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