「カイルは今日も金のことしか考えてないんだろうな」

「ああ、きっとそうさ。あいつの頭にはもう永遠に湧き出てくる金しかないのさ」

店主と客がそんな話をする中、母親は「行くわよ」と言い子どもの手を引く。そして子どもに屋敷のことを忘れさせるためか、今日の夕食に何が食べたいのかを訊いた。

「オムライス食べたい!」

そう言って無邪気に笑う子どもを見て、母親は強く思う。子どもが金のことしか考えない強欲な人間にはなってほしくないと……。



町の人間からすっかり見放されてしまったことさえ知らず、カイルは今日も金を見ながら酒に溺れる。飲む酒の量は日に日に増え、今のカイルは昔の面影が全くないと言っていいほど見た目が変わってしまっていた。

立派なスーツを着た体はだらしなく太り、髪は髭は伸び放題だ。しかし、そんな姿になってしまっても彼が気にすることはない。

「おお!今日は二十粒も金が実った!セーラ、新しい宝石でも買ってやるぞ?」

金によって人生が狂った男は、広い屋敷でただ独り、今日も生きている。