「……」

「屋上では言い過ぎた。何遠慮してんのか分かんないけど、悩み事があったら、ちゃんと相談しろ」

「……さ、先に謝るのはズルイよ」

敦子は言って頬を膨らませた。

「だって潤は待ち受け出てないのに、こんなにがんばってるんだよ。私だって、当事者なんだからもっと耐えてがんばらなきゃ」

敦子の瞳から涙が溢れる。

膨らんだ頬に滑って、床へ落ちた。

「バカだから、全然前に進めないけど、千恵ちゃんも助けたいし。もう誰にも……森先輩みたいになって欲しくないしッ」

「そんな風にバカなりにがんばってるお前を傷つけたんだから、藤田には謝って貰わないと筋が通らないだろ?」

「……」

敦子は瞳に溜めた涙を懸命に拭く。

サクサクと階段を上り、踊り場まであがってきた。

「ゴメンね、潤。私も酷いこといった。がんばってくれてるのに、ホントにゴメン」

「お前が気分屋でアレコレ言うのは慣れてるから」

コンピュータ室の鍵をウォレットチェーンから外して用意する。

教室を開けて、クーラーのスイッチを入れた。

あれ、明かりのスイッチって準備室だっけ?

ふと教室の壁に照明のスイッチがないことに気づき、準備室の鍵を開ける。

カーテンが閉められていて、ソフトの箱が積み上げられていて暗かった。

「敦子ー、電源先に入れといてくれ」

「わかったー」

準備室のドア越しに、敦子に言うと、返事が聞こえる。

手探りで壁に触っていると、ヒヤリ、と冷たいモノが触れた。

「?」

視線を投げる。




真っ赤な、充血した瞳がこちらを見つめていた。