残りの日を計算して、気合いを入れ直した。

「河田、あとで死の待ち受けの女、見て貰いたい」

しばらく雑談をして屋上から降りる。

階段にさしかかると、敦子が階段に1人、座っていた。

後ろ姿でも分る。敦子の髪。

栗色というには黒すぎる。

ゆるい巻き髪。

思わず立ち止まってしまうと、後ろからやってきた山岡と河田も敦子に気づいた。

山岡が声を掛けようとしたが、その前に敦子がこちらに気が付き、振り返った。

「潤……」

敦子の目は真っ赤だった。

コンタクトでもずれたのか?なんて

いつものような会話が続けられない。

どう考えても涙の跡だった。

「どうした? 何かあったか?」

階段をゆっくりと降り、敦子の座る段でかがむ。

敦子は手にしていたヴィヴィアンのハンカチをぎゅっと握りしめて涙を拭いた。

「びっくりした、なんで屋上から出てくるかな」

「さぼってたから」

間を置かず言うと、敦子の目元が笑った。

「特進のくせに、ムカつくぅ」

「敦子はどうした?」

山岡は、不安だと言って俺たちを探しに来た。

敦子も不安……なのは決まってる。

「不安か?」

「不安、不安だよ、うん……でも、私は大丈夫。負けない」

敦子は言って遠くを見た。

そこに森先輩が映っているのだろうか。

「でもさ、自分の気持ちだけじゃどうにもならないことってあるよ、それが、辛くて……ちょっと凹んでただけっ」

自分だけではどうにもならないこと?