「敦子ーー!!」

鍵の締められた部屋から、森先輩の声がする。

その声で、全員が我に戻った。


..♪♪..♪.♪

軽やかに響く、場違いな着メロ


「助けてっ……敦……!あつ」

敦子は震える手でポケットからケータイを取りだした。

大きなマスコットが揺れて、画面に明かりが灯る。


『着信 森真由美』


敦子の瞳にたまった涙が、頬を滑る。


手が今まで以上に震えていた。


ただ、シーン、とした空間を、森先輩の悲鳴だけが音になって響く。

敦子の左手の親指が、通話ボタンへと伸びた。

「やめろ!」

俺は意味もなく手を掴んだ。

だが敦子は俺の手を払い、涙で潤んだ瞳を俺に向ける。

今にもちぎれそうなほどに、下唇をかみしめて。



「先輩が、助けてって言ってるのに、電話取るなって言うの?」



それにもう、着信してしまった……

堀口俊彦の瞳が、俺を諭す。


敦子の指が通話ボタンを押した。