「多分、固定電話はダメなんだ」

「?」

「待ち受けは、番号の判別をつけて飛んでる。ケータイの番号でなければ、その次の番号を見て飛んでるんだ、待ち受けが表示できる、ケータイのナンバーになるまでさかのぼって」

山岡や森先輩にも伝えなくては

急いでケータイを取る。

そして、その手を堀口俊彦が止めた。

「お前、今待ち受けが出てる奴に伝えようとしてるのか?」

「そうです」

「やめろ、そいつの『着信』に残る。お前に伝染する可能性が高くなるってことだぞ」

言われてはっとした。

手が震えるのが自分で分かった。

山岡はまだあと14日ある。

だが森先輩はもう……

……別の奴が電話するならいいってことか?

俺、今すごい最低な考えをした。

「俺が電話する、番号教えてもらえるか。俺はもう出てるんだこれ以上待ち受けの出ようがないだろ」

「そんな保証はないです」

「なくても、今クロの人間がやった方がマシだ!」

言って堀口俊彦は通話ボタンを押した。

会話が始まる。俺は顔を上げられなかった。

ふいに肩に手が乗る。

顔をあげると、堀口俊彦は小さく頷いてみせた。

「……あぁ、そうする。……あぁ、そうだ、頼む」

堀口俊彦は言って通話を終える。

「そんな、暗い顔するな、景がいなくなった俺みたいな顔してる」

「……」

「俺のこの待ち受けが、景から来たってことは、景がこれを止めてくれって俺に言ってるってことだ。協力する」

堀口俊彦は言って、コーヒーを仰いだ。

「黒沢、森さんとこに案内してくれ。景以外にもう誰も死なせたくない。これが現実なら、受け止めなくちゃいけないんだ」