√セッテン

歌?

山岸絵里子もそんなこと言ていたな。

「耳鳴りがするとか、幻聴がするとか、前日から言ってた…だけどそれが原因で飛び込むなんて思わなかった」

考えながら聞いていると、一拍重い間を置いて、堀口俊彦が口を開いた。

「……出たんだ」

「?」

「俺のケータイにも、死の待ち受けが」

「……え? 誰に電話したんですか? 着信は?」

「昨日から、俺は景にしか電話してない。着信も景のばっかりだ。昨日の夜、お前がメールくれただろ。着信と発信が原因かもしれないって、だから、景も俺のこと考えて、ちゃんと家電に電話して」

堀口俊彦はケータイを机の上に置いて、下を向いた。

俺はそっとテーブルの上に置かれたケータイを手に取る。

そこには昨日山岡のケータイの待ち受けになっていた、暗いフローリングの写真が待ちうけになっていた。


カウントは、15…


間違いない。死の待ち受け。

「……発信と着信に関係あるんじゃなかったのかよ!」

堀口俊彦の声に、周りの客がこちらに振り向いた。

俺は無視をして、じっとケータイを見つめていた。

着信と発信を見る。

発信も着信も、ほとんどが渋谷景で埋まっていた。

「間違いなく、渋谷さんの最後の発信と着信は家だったんですか?」

堀口俊彦は無言で頷いた。

「そうすると……考えられるのは」

着信と発信は関係ない。

いや、それはない。

とすると、家電……固定電話はスキップして090、080から始まる番号に飛ぶってことか?

「渋谷さんのケータイは?」

「景の親が持ってる、……もらいに行くこともできるけど……」