√セッテン

♪....♪♪♪....♪

ケータイが鳴った。

ポケットからケータイを取り出すと

堀口俊彦、と名前が表示されていた。

「もしもし」

『黒沢……潤か?』

彼女が死んだというのに、明るくしろとは言わないが、声は押し殺したように重い。

『話がある。無理を承知で、これから出てこれないか?』

「………話って?」

『会って話す』

堀口俊彦の言葉の重みに、一拍おいてから返事を返す。

立幸館と二条の間、私鉄T線の片平駅前の喫茶店シャノアールで約束をした。

オレンジジュースを飲みきってゴミ箱へ投げ入れると、カバンを持ってそのままクラスを出る。

河田とすれ違うが、後は頼んだ、と適当に言ってハイタッチすると昇降口へ降りる。


外に出ると夏の日差しが肌を焼いた。

片平駅前の喫茶店シャノアールはビジネスマンで席が埋まっていた。

席が空くのを待っていると、背後から肩を叩かれた。

堀口俊彦だった。

「悪いな、呼び出して」

「いいえ」

すでに席をとっていたのか、一番奥の席に座る。

堀口俊彦は、居心地が悪そうに無言の間をもってから俺に声をかけた。

「景が、飛び込み……しただろう」

「えぇ」

「俺も一緒にいた。景は俺の手振りほどいて飛び込んだんだ」

堀口俊彦は頭をかかえて続けた。

「歌が聞こえるって」