√セッテン

「いいよなぁ、元から頭いいやつはさぁ~」

「お前だって特進なんだから頭いいはずだろ」

「へーへー、俺はどうせ偶然紛れ込んだだけですよー」

河田は言いながら、シャツのポケットに下げている『特進2B』という名札を指で磨いた。

「その蔵持は、まだ行方不明なのか?」

「蔵持七海ねーうん、そうらしいよ。学校来てないし休学中だって。すっげぇ美人。俺文化祭でチラっとだけみたことがあるけど。雑誌とかミスコンとか、話によると、エントリーはされるけど辞退するらしい。おとなしい先輩なんだろうな」

「……」

「ぶっちゃけ池谷美保も可愛がってたらしいぜ。仲良しっつーのとはまた違って…所有欲?仲間にはかわいい子が欲しいってやつか、行方不明になって心配しただろーなー」

「人形でもあるまいし……」

「俺なら嫌だけどねー仲間内に自分よりカッケー奴とかいたら、そいつばっかりモテてむかつくじゃん」

「女の思考は違うんだろ」

「ほい、ノート、サンキュー」

河田が後ろからポン、とノートを肩に乗せてきた。

振り返ってノートを受け取るとコピー室から出る。

河田はさっきoffにしたはずのケータイを取り出すと誰かに電話を始めた。

こいつにケータイなしの生活は無理だな。

河田を放って、クラスに戻って関係を整理する。

伝染ルールが分かったことで、はっきりしたこともいくつかある。

それぞれ、発信・着信で人は死ぬが、同じ人間から派生しても、発信、着信で1日以上のタイムラグが生まれてる。

どうやら、最後に発信した相手の方がが早くカウントがはじまるようだ。

しかし

まずいな……

吉沢アヤトの分が把握できない。

さすがにもうケータイも解約されてるだろう。

誰に飛んだのか、把握は不可能だ。