『でさ俺、昨日電話番号貰ったじゃん、念のため電話してみるわーよく分らないけど、今日話通せよ!? 俺大丈夫だよな!』

「あぁ、詳しくは学校で話す」

俺は言って通話を切った。

「どうしたの?」

「昨日話した渋谷景が死んだ。駅で飛び込みだ」

山岡に答えながら、俺は学校へ行く用意を始めた。

「うそ!これも、待ち受けのせいなの?」

「山岡、お前学校どうする?」

「私? 私も……行くよ!」

「敦子はどうした?」

「森先輩送るって、先に出たよ。あの、でも鍵が……」

「場所知ってるから」

俺の言葉に、山岡が勢いを弱めて続けた。

「潤君って、敦子ちゃんの家によく来るの?」

「あぁ、あいつバカだし、よく勉強教えに」

「そうなんだ……」

「それに敦子の家、男手ないからたまに借り出されたりな」

「敦子ちゃんのお父さん……中学校の時に亡くなっちゃったんだよね。いつもスゴイ明るいから、そんな悲しいことがあったなんて考えられないよ」

「敦子、あんまりそういう事は顔に出さないからな」

靴箱の中に隠してある家の鍵を引っ張り出す。

敦子の好きなねずみのキャラクターがキーホルダーになっている。

「行こう。電車止まってるみたいだけど、もう出ないと」

家を出て鍵を締めると、俺は山岡と歩き出した。

夏だからか、朝早いというのにもう暑い。

隣の山岡を見ると、すでに汗をかいていた。

「暑い?」

「え? そうじゃないよ」